むらもと農園の詳しい説明

<平成21年2月19日-平成30年7月7日 邑本太一 記>


私たちの農業のこれまでの経緯と基本的考え方

 私(邑本太一)は約10年間の転勤族生活の後、平成10年春から島原半島で 農業生産法人(有限会社の農場)の従業員として農業に従事しました。そこでは当初は、一時的な腰 掛けではなく長期に渡って一生懸命農業に従事するつもりでした。しかし農業の現場や農産物流通の事情 を知った結果、自分で経営することによって自分の信条に沿った農業を営むことに しました。
 平成12年1月に鹿町町の隣の江迎町の借地で自営農業を開始し、平成16年7月からは妻 も加わって、現在では鹿町町の農地約1ha(10,000m2)で営農しています。 (鹿町町と江迎町は北松浦郡でしたが、いずれも平成22年3月31日に佐世保市に吸収されました。)
 二人とも、農家の出身でも鹿町町内の出身でもありませんが、未成年の頃から農業又はそれに関係 する仕事に興味を持ち続け、縁あって鹿町町に移住してきました。


私たちの農法

 私たちの農法は草、虫、菌を敵としない、赤峰勝人さん提唱の循環農法を基本にしています。化学 肥料と除草剤を使わず、草が集めてくれるミネラル分を活用すれば、作物が健康に育つので殺虫剤や 殺菌剤がいらず、しかもおいしくて安全という原理です。

 私が平成10-11年に勤めた島原半島の 農場では、田畑の利用方法や各種農具の使い方など、基本的な実技を 結果的に習得することができて感謝して います。化学肥料と農薬を使わない栽培方法については、その後江迎町の 農業生産法人味菜自然村や赤峰勝人さんの百姓 塾、川口由一さんの自然農の学びの会などに通いつつ、 自分の田畑で実践して学びました。
 現在は佐世保市を拠点とする特定非営利活動法人 「大地といのちの会」に関連する「元気野菜生産者の会」 に参加して、種々学ばせていただいています。


有機栽培の考え方について

 有機栽培の基本的な考え方は、人それぞれでいろいろあります。
 化学肥料や農薬を施用することによって、収穫物に化学合成物質が 残留するということだけを問題視するならば、 防虫網で蛾や蝶の産卵を防いだり、有機JASで許容されている種類の 農薬や忌避剤や生物農薬(天敵)を使うという選択肢があります。 また、虫食いの穴だらけの野菜こそが安全だということにも なり得ます。

 私たちは、人工的な化学合成物質を施用しないという基本に加えて、 作物自体が健康であれば病気や虫に侵されにくいという、循環農法の考え方 に則っています。ですから、防虫網や忌避剤や自然農薬なども使いません。 防虫網などを使わなくても無事に育つ野菜こそが、おいしくて安全だという 考え方です。但し8、9月のコオロギ対策には例外として防虫網を使います。 コオロギは作物の健康状態に関係なく、好みの野菜の幼苗を食べ尽くすからです。 そういう育て方をして野菜が虫に食べられた場合、 少しの虫食いであれば良いのですが、虫食いが著しい場合は残念ながら 野菜が不健康に育ったということで、おいしくて安全な野菜ではないと 判断して収穫せず、育てた場所の土に返します。

 上で「作物」、「野菜」という二つの表現を混在させましたが、 循環農法の考え方は「作物」全般に言えることです。しかし、 虫食いで問題になる度合いが高いのは野菜なので、ほぼ野菜だけを想定する 部分では「野菜」と書きました。また「作物」は穀物などに限定せず、 農作物全般を指しています。
 私たちの実際の農業では、循環農法の考え方を実践して水稲、はだか麦、小麦、 きび、ごま、そばなどは、ほぼ全く問題なく育てることができています。大豆、小豆は 収穫後に虫食い豆を選別する作業が必須ですが、これはそんなものと思っています。
 一方野菜は、種類や栽培時期による違いが大きく、中には歩留まりが大変低くて、 農業経営が軌道に乗るのを妨げる大きな要因になっているものもあります。 これは私たちが労力の制約のために、充分な量の草堆肥を土に供給するに至っていないことに加えて、 酸性雨や気候変動(秋の高温少雨や暖冬など)も原因になっていると思います。

 循環農法について詳しいことは、赤峰勝人さんのご著書「ニンジンから宇宙へ」と 「循環農法」[いずれも(株)なずなワールド 刊]に分かり易く書かれています。


現在の経営形態

 当初は野菜の他に米、麦、雑穀、大豆、小豆なども栽培し、更に一時は平飼い採卵養鶏もして いました。しかし新規参入で納屋(倉庫)などの設備や経営基盤に制約があるため、現在は野菜栽培に ほぼ専念しています。


食べて下さる方々との関係について

 大自然に感謝しつつ、食べものの生命(いのち)をいただくという考えのもとでは、自分と同じヒ トである皆様の行為に「召し上がる」という表現を使うことは、大自然や食べものをしてへりくだら しむることになるようで抵抗を感じるので、ここでは「食べて下さる」とか「活かして下さる」と表現 したいと思います。

 化学肥料と農薬を多用する農業が普及し、それが慣行農法と称されるようになった後で、化学肥料 と農薬を使わない有機農業が広まったきっかけは、1970年代に「沈黙の春」や「複合汚染」で目覚め た消費者が、農家を訪ね歩いて農家の自家用と同じ野菜を分けて下さいと頼んで回ったことだった そうです。その頃の野菜は、市場出荷用には強力な殺虫剤や殺菌剤をたくさん散布し、 自家用にはそれをあまり散布しない農家が多かったそうです。その頃の農家が悪いのではなく、きれいな野 菜を要求した市場(しじょう)に原因があったわけですが、それに気付いた消費者が行動したのでし た。自給農園の共有と言えましょう。
 現在の私たちの農業はその流れを汲む20軒分の面積の自給菜園 代行業だと、私は思っています。2000年から2015年まで、三十数軒のご家庭に通年で継続して 野菜セットをお届けしていました。 食べてくださる方々のご事情に応じて、お届け頻度は一週間に一回(毎週)と二週間に一回(隔週) からお選びいただいていました。 そのため面積は20軒分でも、食べてくださる方々は30軒以上となっていました。
 経済的事情のために2015年末をもって生業としての農業を一旦終了したため、この定期お届けは 2015年末をもって終了しました。
 その後2018年から兼業農家となって農業を再開しました。宅配便を利用した野菜セットの販売再開は 今後の課題です。2年半の休止中に宅配便の労働条件改善のための運賃値上げがあり、戸別宅配には 不利な状況になっていると認識しています。
 通年で食べて下さっている方々への供給責任を果たすためには、天候不良などによる生育不良に 備えて余分に栽培する必要があります。その分が順調に育って収穫量に余裕が生じた場合は、 直売所や自然食品の店で不定期に販売して経営状態の改善に努めてきました。が、現在は定期宅配を 休止しているので逆にこちらが主たる販売方法となっています。


 最後までお読みくださいまして、ありがとうございました。


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