むらもと農園での自家採種

<平成21年2月19日 太一 記、平成21年5月21日 更新>

自主自立の食べもの供給者たるべく、自家採種にも取り組んでいます。


自家採種とは

 野菜や穀物や草花の種子や、芋(いも)類の種芋などを毎回購入するのではなく、 自分の田畑で結実させて種子を採取したり、収穫した芋類の一部を種芋にすること。


自家採種の意義

 現在市場に流通している野菜は、種苗会社が育種した 一代交配雑種(F1品種)が主流となっています。 F1品種の種子は毎回種苗会社から購入します。

 F1品種は生育が旺盛で育てやすく、販売用に育てる野菜の種子として 優れていますが、各種苗会社の独自の品種なので大切な種子の確保において 種苗会社に依存することになります。
 野菜は品種ごとに栽培特性があって、自分のところではいつ頃タネをまけば虫に食べられずに よく育つのかというようなことを、理解する必要があります。 これは栽培経験を蓄積することによって体得し生かすことができます。 もし種苗会社が経営効率や新品種への切り替えなどの都合で 自分が愛用してきた品種の種子の供給を中止した場合、せっかく蓄積した栽培経験が 無になります。

 自分で種子を採取(自家採種)し続けることによって、その品種の特性を より深く理解することができると同時に、種苗会社の都合や社会情勢 (例えば外国からの種子輸入の途絶など)に影響されない 自立した百姓たることができると思います。

 また、自家採種を長年続けることによって、作物の遺伝子に その地域の気候などの特性が記憶されていき、地域に適合した品種に なっていくとも考えられます。これは種子繁殖の作物だけでなく、 種芋などで増やす栄養繁殖の作物にも言えることです。
 地域ごとの土壌や気候に適合することによって、 作物の生育状況がより健康になれば、農薬を使わなくても病虫害を受けずに 育ってくれる可能性が高くなると考えられます。


自家採種の方法

 種子の場合、形質の優れたものを20株以上選んで、他の品種の花粉の 飛来による交雑が起きにくい場所で、開花、結実させます。
 F1品種(一代交配)ではなく、遺伝的に比較的純粋な在来の固定種を 選んで採種します。 (あえてF1品種から採種して、それから育つ多様な次世代の中から 自分に合った性質のものを選ぶ方も、いらっしゃいます。)

 大根や人参などは収穫時に良いものを20本以上選んで、別の場所にまとめて植え直します。
 小松菜など小型の葉菜類は、うねの一部を面として採種用に残し、開花、結実させます。
 じゃがいも、里芋などの芋類は、収穫時に株単位で良いものを選び、次回の種芋として確保します。 一番良いものを種芋にします。逆に出荷不適の不良品を種芋にすると、 悪い形質を選抜することになってしまいます。


自家採種の様子

和歌山 白首大根(和歌山)。 平成21年3月15日。

総太り宮重 青首大根(宮重)

東京黒水菜 小松菜(東京黒水菜)
採種用に残す区画を決めて、目印として棒を立てたところ

大阪しろな 大阪しろな。平成21年3月22日。

金町小蕪 金町小蕪。平成21年3月30日。

新黒田五寸 人参(新黒田五寸)。平成21年5月10日。

中葉春菊 中葉春菊。平成21年5月2日。

 以上はいずれも、自家採種した種子から育てたものから、 再び採種している様子です。

 上記以外にも、そら豆、グリンピース、スナップえんどう、 絹さやえんどう、さやいんげん(つるあり)、ささげ、 西瓜、ニガウリ、へちま、オクラ、モロヘイヤ、 オカノリ、ヒユナ、伏見甘長唐辛子、鷹の爪唐辛子、 水稲、はだか麦、小麦、きび、ごま(黒・白)、大豆、小豆、 さつまいも(高系14号)、里芋(赤芽大吉)、大生姜、 じゃがいも(普賢丸)、れんこん(だるま系)、くわいなどを、 自家採種して育てています。

 一方、きゅうり、南瓜、ピーマン、パプリカ、茄子、トマト、 はくさい、キャベツ、ブロッコリー、春蒔き人参などについては、 収量や食味の面で販売用野菜としてはまだ自家採種した種子からの 栽培に切り替えきれずにいます。
 例えば、きゅうりは日照不足などの過酷な条件下で、 自家採種向きの固定種では苦味が出やすいのに対して、 F1品種は苦味を呈しません。ピーマン、パプリカは F1品種は栽培容易で安定多収ですが、固定種は悪条件下で 収量が著しく少なくなります。 ブロッコリーは固定種では花蕾が小さく、栽培と収穫作業の効率が 劣ることと、F1品種の食味が悪くないことから F1品種に頼っています。
 大根は自家採種のものが食味極上で品質は明らかに優れていると 思いますが、収穫適期が短いのでF1品種も栽培することによって 収穫期の幅を広げています。また、固定種大根は空洞やスができやすい ですが、F1品種は空洞やスができにくいので、販売用としては優れていると 思います。

 販売農家としては、実用的に可能な範囲でなるべく自家採種をしつつ、 F1品種も適宜取り入れて、食べてくださる方々の需要を満たしていきたいと 思います。


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